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AIのデータレジデンシー要件:2026年に適用されるルール

AIのデータレジデンシー要件:2026年に適用されるルール

AIのデータレジデンシー要件:2026年に適用されるルール

AIのデータレジデンシーを規律するのはAI Actではなく、GDPRの越境移転規制、DORA、PRA SS2/21、EU域外の法令です。各制度が求める内容と、その遵守を証明するコントロールを解説します。

AIのデータレジデンシーを規律するのはAI Actではなく、GDPRの越境移転規制、DORA、PRA SS2/21、EU域外の法令です。各制度が求める内容と、その遵守を証明するコントロールを解説します。

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12分で読めます

AIのデータレジデンシー要件は、AI法そのものではなく、AIシステムが扱うデータをすでに規律している法令から生じます。GDPR第5章、DORA、PRA SS2/21、中国のPIPL、インドのDPDP規則はいずれも、プロンプト、出力、ログ、エンベディングがどこに送られるかを問うものです。EU AI Actはデータレジデンシー要件を課していません。難しいのは、推論がどこで実行されたかを証明することです。

データレジデンシー、データ主権、データローカライゼーションの違いとは?

この3つの用語を同義語として扱うデータレジデンシーの取り組みは、問うべき問いを取り違えています。

データレジデンシーとは、データが物理的に保存・処理される場所のことです。通常は組織が自ら選択し、契約と設定によって固定するもので、法令による要求がなくても成り立ちます。AIに即した定義は、Enzai用語集のデータレジデンシーの項目に記載しています。

データ主権とは、どの国の法律、裁判所、強制的なアクセス権限がそのデータに及ぶかという問題です。ハードウェアの所在地だけでなく、プロバイダーに及ぶ法的な管轄にも左右されます。米国に本社を置くプロバイダーがEUリージョンを運用している場合、データレジデンシーは満たしていても、米国の法的手続きの対象であり続けます。これがデータ主権の問題です。

データローカライゼーションとは、特定のカテゴリーのデータを国内にとどめることを義務づける法的要件で、国外への移転は所定の手続きによってのみ認められるか、まったく認められません。3つのうち、それ自体が要件となっているのはこれだけです。中国PIPL第40条はローカライゼーション規定ですが、GDPRは違います。GDPRは移転を規制するものであり、要件を満たした移転は適法だからです。なお、Enzai用語集のローカリゼーションの項目では、この語を、AIシステムを各地域の市場に適応させるという製品上の意味で使っています。

AIでデータレジデンシーの証明が難しくなるのはなぜか?

従来、データレジデンシーはデータベース層で解決されていました。AIは推論層でデータを移動させますが、そこでは経路が見えにくく、多くの場合ベンダーのグローバルルーティングが既定になっています。


AIのデータ経路

生じるレジデンシー上の論点

対応するコントロール

ホスト型モデルへのプロンプト送信

どのリージョンがリクエストを処理したか、フェイルオーバーで別の場所に転送されなかったか

リージョン固定またはデータゾーンのエンドポイント、リクエスト単位のリージョンログ記録

生成結果の返却とログ記録

ベンダーがプロンプトと出力のログをどこに、どれだけの期間保存するか

契約上の保持条件、提供されている場合はゼロリテンション設定

不正利用の監視とテレメトリ

ベンダーの安全性レビューでコンテンツがリージョン外にコピーされないか

監視場所の書面による明示、ベンダーが対応している場合は対象からの除外

送信データによる学習またはファインチューニング

規制対象データが他の法域でモデルの重みとして取り込まれないか

学習に利用しない旨の契約上の確約、オプトアウトをエビデンスとして記録

マルチリージョンのフェイルオーバーとグローバル推論プロファイル

既定のルーティングが、アーキテクチャで想定したリージョンを無視していないか

地理的プロファイルの明示的な選択、グローバルエンドポイントの拒否リスト

エンベディングとベクトルストア

個人データや機密データの派生コピーが、元データとは別のリージョンに置かれていないか

ベクトルを規制対象データとして扱う、ベクトルストアをリージョン固定にする、インベントリに記録する

リージョン間の検索

検索ステップが、リクエストのリージョン外にあるストアから文書を取得していないか

リージョン単位の検索インデックス、アクセスログ記録

既存のSaaSに組み込まれたAI機能

ベンダーの新しいAI機能によって、通知なく再委託先やリージョンが追加されていないか

再委託先の変更通知、インベントリでのベンダーAI機能のレビュー

このうち2つの経路は見落とされがちです。エンベディングからは元のテキストに近い内容を復元できるため、別リージョンにあるベクトルストアは規制対象データの2つ目のコピーにあたります。また、主要プラットフォームのいくつかでは既定のルーティングがグローバルになっており、単一リージョン向けに設計したシステムでも、容量が不足した時点で別のリージョンで実行される可能性があります。ベンダー側の論点については、EnzaiのサードパーティAIベンダーリスク評価ガイドで解説しています。

GDPRと英国GDPRは、リージョン外でのAI処理に何を求めているか?

GDPRは、個人データをEEA域内にとどめることを求めてはいません。GDPR第5章(第44条から第49条)は、次の3つのいずれかに該当しない限り、第三国への移転を制限しています。第45条に基づく十分性認定、第46条に基づく適切な保護措置(標準契約条項や拘束的企業準則など)、または第49条に基づく例外です。この例外について、EDPB(欧州データ保護会議)は最後の手段とすべきだとしています。個人データを含むプロンプトを米国でホストされたモデルに送信することは、移転にあたります。

米国でホストされるモデルの場合、十分性認定のルートは2023年7月10日に採択されたEU-US Data Privacy Framework(DPF)です。EU一般裁判所は2025年9月3日、Latombe対欧州委員会事件(T-553/23)においてこれを支持しました。Philippe Latombe氏は2025年10月31日、事件番号C-703/25 PとしてEU司法裁判所に上訴しており、2026年9月14日時点で係属中です。そのため、DPFに基づく移転は、SCCを代替手段として文書化しておくべきです。

英国からEEAへのデータ移転は、欧州委員会が2025年12月19日に採択した、2031年12月27日まで有効な英国向け十分性認定(更新版)に基づいています。英国からの移転については、ICOのガイダンスにより、十分性規則、移転リスク評価を伴う適切な保護措置(IDTAまたはAddendum)、または例外のいずれかが必要とされています。欧州委員会の十分性認定リストには、2026年1月26日からブラジルが含まれています。

EU AI Actはデータレジデンシー要件を課しているか?

いいえ。規則(EU)2024/1689には、データをEU域内で保存または処理することを求める規定はなく、AIに関するデジタル・オムニバス(規則(EU)2026/1744)でも追加されていません。

ただし、高リスクAIシステムについては、2つの条文がデータレジデンシーに関わります。第10条(データおよびデータガバナンス)は、学習用、検証用、テスト用のデータセットにデータガバナンスの実務を適用することを求めており、データレジデンシーの方針はここに記録されます。第12条(記録保持)は、高リスクAIシステムに対し「システムのライフタイム全体にわたって、イベント(ログ)の自動記録を技術的に可能にする」ことを求め、第26条第6項は導入者に対し、これらのログを少なくとも6か月間保存することを求めています。個人データを含むログはGDPR第5章の対象となるため、ベンダーがAI Actに基づくログをどこに保存するかは移転の問題になります。これらの義務は、附属書IIIのシステムには2027年12月2日から、附属書Iのシステムには2028年8月2日から適用されます。期限の一覧は、EnzaiのEU AI Actコンプライアンスガイドに掲載しています。

データ法(Data Act)(規則(EU)2023/2854、2025年9月12日から適用)も関連する手段です。第6章は顧客にデータ処理サービスを切り替える権利を与え、切り替え費用は2027年1月12日から廃止されます。また第32条は、EU域内に保持される非個人データへの第三国政府によるアクセスに抵抗することをプロバイダーに義務づけています。

金融規制当局は処理場所について何を求めているか?

金融規制当局もデータレジデンシーを義務づけてはいません。ただし、重要なICTサービスのすべてについて、その所在地を把握し、記録し、契約で定めることを企業に求めています。AIシステムの場合、これはエンドポイント、ログ、そしてファインチューニングのパイプラインを意味します。

DORA(規則(EU)2022/2554)の第28条第3項は、すべてのICTサードパーティ契約に関する情報登録簿を求めています。欧州委員会実施規則(EU)2024/2956のテンプレートには、サービス提供国と保存データの所在地を記入する欄があることを、テンプレートに関するEIOPAのQ&Aが確認しています。第30条第2項(b)は、ICT契約において「委託または再委託された機能およびICTサービスが提供され、データが処理される場所、すなわち地域または国(保存場所を含む)」を明記し、変更時には事前に通知することを求めています。推論をグローバルにルーティングする権利を留保するベンダーは、この条項に無条件で署名することはできません。外部委託に関するEBAガイドライン(EBA/GL/2019/02)も同様に、登録簿に「データの所在地(すなわち国または地域)」を記録するよう求めています(第54項)。

英国では、PRA SS2/21が銀行、住宅金融組合(ビルディング・ソサエティ)、PRA指定投資会社、ソルベンシーIIの適用を受ける保険会社に適用されます(現行版は2024年12月31日発効)。第6.4項は、重要な外部委託契約において、サービスが提供される地域または国と、データが保管、処理、移転される地域または国を明記し、変更時には通知することを求めています。また第7.7項は、PRAが制限的なデータローカライゼーションを支持しないことを明言しています。これらの要件をAIベンダーにどう当てはめるかは、EnzaiのサードパーティAIリスク管理のページで解説しています。

公共部門のルールは、AIサービスへのデータの国外移転について何を定めているか?

英国の立場は、OFFICIAL区分では寛容で、健康データについては条件付きです。英国政府のGovernment Cyber Security Policy Handbookは、SENSITIVE表示を含むOFFICIAL区分のデータについて、「適切な法的措置、データ保護措置、セキュリティ対策が講じられていれば、国外のデータセンターまたはクラウドリージョンで保存・処理できる」としています。NHS Englandが2025年5月28日に公表したオフショアリングに関するガイダンスは、英国内でのホスティングを原則とし、EEA、十分性が認められた国、または米国でのホスティングは、リスクが低くSIROが承認した場合に限っています。NCSCのクラウドセキュリティ原則2は、保存先の国と法的管轄に関するデューデリジェンス上の確認事項を示しています。

AIのデータレジデンシーに関わるEU域外の制度は?


制度

状況(2026年9月時点)

AI処理に関する要件

ローカライゼーション義務

GDPR第5章(EU)

施行中。DPFは第一審で支持、上訴(C-703/25 P)が係属中

個人データを含むプロンプト、ログ、エンベディングの適法な移転ルート

なし

英国GDPR

施行中。EUの十分性認定は2031年12月27日まで更新

制限付き移転にはIDTAまたはAddendumと移転リスク評価

なし

EU AI Act

高リスク関連の義務は2027年12月2日および2028年8月2日から適用

データガバナンスの記録(第10条)、ログ記録(第12条)、ログの6か月間保存(第26条第6項)

なし

DORAおよびEBA外部委託ガイドライン(EU金融サービス)

DORAは2025年1月17日から適用

保存データの所在地とサービス提供国を登録簿に記録、処理場所に関する契約条項

なし

PRA SS2/21(英国金融サービス)

現行版は2024年12月31日発効

データ所在地に関する契約条項、リスクベースの所在地評価

なし(明記)

中国PIPLおよび2024年3月22日のCAC規定

施行中

年間100万人超または機微な記録1万件超はセキュリティ評価、10万人から100万人は標準契約または認証、それ未満は免除

あり(CIIOおよびCACの基準値を超える取扱者、第40条)

インドDPDP法2023およびDPDP規則2025

規則は2025年11月13日に公布、中核規定は2027年5月13日から適用

規則15:中央政府が定める条件の下で移転を許可。規則13(4):重要データ受託者(SDF)は、政府が指定する個人データとその通信データをインド国内に保持する必要あり

あり(SDFが対象、データ区分は今後指定)

サウジアラビアPDPL(移転規則は2024年9月1日改正)

施行中。一次資料は未取得(注記参照)

第29条に基づく移転には、十分性、SCC、拘束力のある共通規則、または認証

一般的な義務なし(業種別の承認が必要な場合あり)

オーストラリア・プライバシー法、APP 8

施行中。2024年12月11日に指定国に関する例外を追加

国外への開示前の合理的な措置、第16C条に基づく受領者に関する責任

なし

ブラジルLGPD第33条およびANPD決議19/2024

施行中。SCC導入期限は2025年8月23日に経過、2026年1月27日にEUを十分性ありと認定

十分性、ANPD標準条項、グローバル企業規範、または同意

なし

表のうち3行は、アーキテクチャ上の判断を左右します。中国の基準値は年間の累計人数で数えるため、通話記録を国外のモデルに送るカスタマーサービス用アシスタントは、すぐに10万人を超える可能性があります。インドの規則13(4)は、ペイロードだけでなく「その流れに関する通信データ」も対象としています。対象となるデータ区分は、本稿の執筆にあたって確認したいずれの資料でも、まだ公布されていませんでした。ブラジルとEUは相互に十分性を認めているため、EUリージョンのエンドポイントは、契約条項なしでもブラジルの個人データの適法な移転先となります。

AIシステムのデータ経路をリージョン内にとどめるコントロールとは?

大半は4つのコントロールで対応できます。また、ベンダーのドキュメントを見ると、「リージョナル」という表現を注意深く読む必要がある理由がわかります。

リージョン固定の推論は利用できますが、常に既定とは限りません。Microsoftのデプロイの種類に関するドキュメントによると、保存データはどのデプロイの種類でも指定したAzureのジオグラフィ内にとどまりますが、Globalタイプでは「任意のAzureリージョン」でプロンプトが処理される可能性があり、Data Zoneタイプでは米国、EU、APACのいずれかのゾーン内、Standardタイプでは顧客が指定したジオグラフィ内で処理されます。AWSのクロスリージョン推論に関するドキュメントは、地理的推論プロファイルでは米国、EU、APAC内にルーティングがとどまる一方、グローバルプロファイルではBedrockが任意の商用リージョンを選択できると説明しています。OpenAIのデータコントロールに関するページには10のストレージリージョンが記載されていますが、リージョン内処理に対応しているのは米国、欧州、UAEのみです。AnthropicのClaude Platformのドキュメントでは、inference_geoパラメーターにusとglobalの値があり、globalが既定です。また、保存データについては米国のみのワークスペースジオも用意されています。いずれのページも正確ですが、いずれもグローバルオプションを最も手間のかからない選択肢にしています。

設定では埋められない穴は、ログ記録、保持、学習に関する契約上の確約で埋めます。たとえばOpenAIは、顧客がオプトインしない限りAPIのコンテンツを学習に使用しないこと、またゼロデータリテンションを有効にしない限り不正利用監視のログを最大30日間保持することを明記しています。こうした条件はインベントリの記録に含めるべきものです。

最もリスクの高いシステムでは、独自モデルの持ち込み(BYOM)とプライベートデプロイによってこの問題は解決します。推論経路のログを自社で記録できるようになるためです。Enzaiのプラットフォームは、顧客が自社のモデルとガードレールを持ち込むことを前提としており、特定のLLMプロバイダーを必要としません。そのため、データレジデンシーに関する判断は顧客の手に残ります。

規制当局が求めるコントロールはエビデンスです。DORAの登録簿を確認する監督当局者や、移転影響評価を検証する監査人は、システムごとに、固定されたリージョン、リクエストがそこにとどまったことを示すログ、保持条項、移転メカニズムを必要とします。その記録を保持するのがAIインベントリです。システムごとに1件のエントリがあり、ベンダーとモデルの参照情報、対応づけられたフレームワーク、添付されたエビデンスを備えているため、データレジデンシーを検索可能な属性として扱えます。

運用面で求められること

  1. AIシステム単位ではなく、AIのデータ経路単位で分類します。AIインベントリの各エントリについて、プロンプトの処理場所、出力とログの保存場所、エンベディングの有無とその場所、学習へのデータ利用の有無を記録します。グローバルへのフォールバックがあるリージョンエンドポイントは、2つの経路として扱います。

  2. 既定値を見直します。プラットフォームがデータゾーン、地理的プロファイル、リージョンパラメーターを提供している場合は、コードで設定し、ポリシーでグローバルオプションをブロックし、設定のエクスポートをエビデンスとして保管します。

  3. 各経路を該当する制度に対応づけます。GDPRの移転ルート、DORAの登録簿と契約条項、SS2/21第6.4項の文言、PIPLの基準値に対する人数の集計などです。Enzaiのコンプライアンス・フレームワークモジュールはEU AI ActとあわせてGDPRも扱っているため、義務が重なる部分ではエビデンスを再利用できます。

  4. 契約条件をシステムの記録に添付します。保持期間、学習からの除外、監視場所、再委託先と所在地の変更通知を、それぞれ確認日とともに記録します。

  5. 変更時には再検証します。新しいモデルバージョン、ベンダーの新リージョン、C-703/25 Pに関するEU司法裁判所の判決、規則13(4)に基づくMeitYの通知があれば、影響を受けるすべての経路をレビューします。

データレジデンシーの属性と移転のエビデンスをシステムの記録にどのように紐づけるかについては、Enzaiチームにお問い合わせください。

目次

設計段階からのコンプライアンス

設計段階からのコンプライアンス

設計段階からのコンプライアンス

2023年からISO 27001認証を取得、NQAによる年次監査

GDPRに沿ったデータ取り扱い

顧客データは複数リージョンのAWSでホスト

独自のAIモデルをプライベート接続で利用可能

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AIガバナンス

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インフラストラクチャ

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信頼を築くための設計。

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チームが利用しているAIを見つけ出し、導入前にレビューし、適用される規制に照らして評価し、エージェントにできることを制御します。規制対象組織向けに設計されています。

既存のシステム、ポリシー、AIワークフローをひとつのプラットフォームに接続します。

既存のシステム、ポリシー、AIワークフローをひとつのプラットフォームに接続します。