組織内でエージェンティックAIが普及し、ワシントンDCでは新政権が誕生し、EUのAI法に関する明確な指針が示される中、2025年は非常に興奮する年になることが期待されます。
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パネル参加者:
Jamaur Bronner 氏、The Foregrounds 共同創設者
Monika Viktorova 氏、物流業界 責任あるテクノロジー担当プロダクトマネジャー
Jason Green-Lowe 氏、AI政策センター(Center for AI Policy)エグゼクティブディレクター
モデレーター:Var Shankar 氏、Enzai 最高AI・プライバシー責任者
VS(モデレーター)による紹介:
パネリストを紹介します。
動向が注目される2025年を見据え、AI政策とテクノロジーに焦点を当てて議論します。
パート1:2025年、AIはどこへ向かうのか?
MV:
負の側面(The Bad): アクセスの容易化と低コスト化を背景に、生成AIの悪用が増加しています。具体例としては、詐欺目的の音声クローン、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)の作成、大規模なディスインフォメーション(偽情報)などが挙げられます。悪意のあるアクターがこのテクノロジーを効果的に悪用しています。 また、正規の組織であっても、チャットボットが誤情報を提供したり、会社の規約に反する解決策を提示したりする(エア・カナダの事例など)といった、注目を集める失敗事例が発生しています。 生成AI特有の「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」や、ユーザーに迎合した回答を作成しやすい性質はリスクをもたらします。 具体的な例として、Character.AIにおけるプロアナ(拒食症賛美)チャットボットが多感なティーンエイジャーに影響を与えている事例があり、安全対策(ガードレール)の不足が浮き彫りになっています。
正の側面(The Good): 生成AIは、科学的発見、特に科学および医学の分野において大幅な進歩を後押ししています。 タンパク質構造予測(AlphaFold 2)はその典型例であり、創薬と開発を劇的に加速させています。
組織における導入状況: 生成AIは幅広い業界で展開されています。 セールスやマーケティングのチームは、コンテンツ作成やパーソナライズされたアウトリーチにAIを活用しています。金融などの分野のCRUD(クラッド)アプリケーションでは、レポートの自動作成に生成AIを(ガードレールと監視体制を敷いた上で)導入することにより、膨大な生産性の向上が見られます。 RAG(検索拡張生成)の活用により、大規模な文書リポジトリからの情報抽出や対話が可能になり、情報管理を強力に支援しています。 ただし、ハルシネーションのリスクや、情報源の確認の必要性についてユーザーを教育することが極めて重要です。
主要な要点: 生産性向上のポテンシャルは計り知れませんが、堅牢なガードレール、ユーザー教育、そしてハルシネーションへの対策が不可欠です。大企業における投資対効果(ROI)や価格モデルの確立が、引き続き重要な課題となります。
JGL:
基盤モデル自体のさらなる性能向上を伴わなくとも、テクノロジーのイノベーションには未開拓の巨大なポテンシャルが存在します。組織は現行モデルの活用、新しいニッチ市場の探索、そして対話(インタラクション)方式の「足かせを外すこと」に注力すべきです。 現在の対話は限定的(テキストベース、短いプロンプト、即時応答)ですが、将来的には、より大きなコンテキストウィンドウ、AIの「思考時間」、セルフプロンプト、マルチメディア対話(音声、動画、音楽、車両制御など)、そして実世界へのインパクトをもたらすロボティクスとの統合へと進化していくでしょう。
一時的にモデルのスケーリングが減速したとしても、進歩が恒久的に止まるわけではありません。電力、データ、資金などのボトルネックが指数関数的な成長に影響を与える可能性はありますが、それでも線形な成長は維持される見込みです。 2025年のモデルは、2024年のモデルよりも大幅に強力になる可能性が高いでしょう。 性能向上が頭打ちになっているという報道は、各社が自社の投資や実際の進捗状況について戦略的に口を閉ざしているためであり、誤解を招く恐れがあります。
パート2:2025年、政策はどこへ向かうのか?
JGL:
米国政策の不確実性: 選挙戦中、AIに関する議論はほとんど行われませんでした。共和党の政策プラットフォームにおいて、バイデン政権のAI大統領令を廃止し、「言論の自由と人類の繁栄」に基づくAI開発に置き換えるという、謎めいた言及がなされたのみです。
「言論の自由」の側面: 偽情報への懸念(検閲とみなされるもの)や、ポリティカル・コレクトネスに対する反発が生じる可能性が高いと考えられます。
「人類の繁栄」の側面: その正確な意図は不透明です。バチカンによるAIへの見解や、家族福祉と適切な雇用に関するシカゴ学派経済学の理論との関連性が指摘されています。
多様な顧問陣: トランプ次期政権をとりまくアドバイザーの顔ぶれが多岐にわたるため、現時点における同政権のAIアプローチは不透明です。
期待される展望: 超党派の米国AI安全保障研究所(AI Safety Institute)といったイニシアチブの継続、革新的な企業とのテスティングおよび安全基準における協調、そしてセキュリティガードレールの実装を通じた米国の主導権維持が期待されます。
MV:
米国 vs 欧州(EU): 米国の大統領令は任意の準拠(自主規制)に重点を置いているのに対し、EUの「AI法(AI Act)」には巨額の制裁金が盛り込まれており、厳格な罰則規定を設けています。このEUのアプローチは、将来的な米国の政策における罰則強化に影響を与える可能性があります。
グローバルな規制環境: 中国、ブラジル、オーストラリアなどで個々に規制が整備されつつあり、パッチワーク的な規制環境が形成されています。これは実務チームや役員にとって摩擦や課題を生む原因となります。マルチナショナル企業(多国籍企業)は、様々な法域に適合させるために、プロダクトロードマップ、機能群、基礎となるアーキテクチャ、そして採用するモデルを能動的に適応させていく必要があります。
EUにおける執行: EUが一般データ保護規則(GDPR)下で行った、注目度の高い法執行や高額な罰科金の事例は、AI法の執行モデルとなる可能性があります。これにより、企業(特にグローバル企業)が製品開発や市場投入へアプローチする手法に中長期的な影響が及ぶでしょう。
パート3:組織や実務担当者にとって、これは何を意味するのか?
JB:
リスキリングと適応: AIへの適応状況はばらつきがあり、不十分な点は懸念材料です。多くの企業が戦略的に生成AIを優先事項に掲げていながら、リスキリングの計画を欠いています。組織は、AI教育の推進と標準化の導入に注力する必要があります。
ROI(自己投資責任)の測定: CursorやGitHub Copilotといった開発支援ツールによる生産性の向上は、単に個々の開発者が活用するだけでなく、組織全体で測定し、拡大(スケール)させていく必要があります。
リスクの軽減: 標準化されていない方法で生成AIを使用することは、組織を重大なリスクにさらします。バックテストの実施、人間による監視、そして入念な要因分析が極めて重要です。
スキルセットのシフト: 生成AIツールを活用できるジュニア開発者は「AI対応開発者」へと進化し、創造的な問題解決やソリューション設計に集中できるようになります。これに伴い、職務記述書(ジョブディスクリプション)、人事評価制度、能力考課などの刷新が必要となります。
雇用への悪影響に対する懸念の解消: 一部の職務が再配分される可能性はありますが、フォーカスすべきはAIを「能力向上の支援ツール」としてレバレッジすることです。責任ある姿勢をもつ組織は、職場、業務フロー、職務要件を再定義し、新たな役割を創出するとともに、人間の監視能力を効果的に配置すべきです。
組織への示唆とベストプラクティス: 現在、多くのベストプラクティスが、従来のコンサルティングファームやビジネススクールからではなく、豊富な資金力を持つ先進企業や現場のケーススタディから、リアルタイムで創出されています。
JB (続き): ベストプラクティスの情報源
基盤モデルプロバイダー: LLM University(Cohere)などの教育プログラムや、OpenAIによる同様の取り組みは、極めて価値のあるリソースを提供しています。
AI教育パートナー: The Foregroundsをはじめとする組織が、ケーススタディの集約、成功・失敗事例の評価、そして最高水準の専門家へのインタビューを通じて、ベストプラクティスの体系化と普及に努めています。
社内のAI倫理・ガバナンスチーム: これらの専門チームは、組織内におけるコンプライアンス、責任あるデプロイメント、そして部門横断的なアライメントを牽引しています。
政府および政府関連機関: シンガポールの「国家AI戦略(National AI Strategy)」や、「AI政策センター(Center for AI Policy)」活動などのイニシアチブは、ステークホルダー間の合意形成を通じて、グローバルなベストプラクティスに影響を与えつつあります。
JB (続き): 起業家精神の促進
新政権が起業家精神の促進に注力する姿勢を見せていること、そして保守政権が伝統的に優先してきた分野(国防、先端製造業)への投資拡大可能性、さらにイーロン・マスク氏などのリーダーたちの影響力が重なることで、スタートアップを取り巻く勢力図にシフトが生じることが予測されます。
防衛産業: AndurilやPalantirといった防衛テクノロジー企業は、さらに多くの機会を獲得していくと見られます。
先端製造業とロボティクス: 製造業の国内回帰(オンショアリング)へのフォーカスは、ブルーカラーの仕事をAIで代替するのではなく、その労働力をAIでエンパワーする方向に働きます。Figureや、イーロン・マスク氏率いる人型ロボティクス(ヒューマノイド)事業などが代表例です。これは産業製造業の観点からも極めて魅力的な機会を提供します。
クリエイティブ産業: 音楽生成、映像制作、画像生成などのAIツールを革新的な手法で駆使し、新世代の起業家やクリエイターが台頭しています。これらの個人は、かつてSaaS製品が普及した時代と同様に、ツールの専門家として事業を拡大し、参入障壁を低く抑えつつ、新たなエコシステムの一翼を担っています。これは、製品開発のライフサイクルを効率化し、より迅速なイテレーションと市場投入を可能にすることで実現しています。
医療・ヘルスケアと教育: これらの分野には素晴らしい今後の可能性がありますが、過去の保守的な政策アプローチを鑑みると、新政権がこれらのインフラにおいてAIの広範な利用拡大を支援するかどうかは、いまだ不透明です。
MV(続き):中堅・中小規模の組織
大企業の生成AIにおける優位性: グローバル拠点を持つ大企業は、通常、豊富なデータと資本を有しているため、生成AIの自社開発において大きな優位性を保持します。その一方で、それらの大企業は多様で、時に互いに矛盾する規制(大統領令、EU AI法、さらには中国、ブラジル、オーストラリア等の法規制)への対応という大きな課題にも直面しています。この断片化した規制制度に適応することは、プロダクト開発とデプロイメントの難易度を高めています。
中堅・中小企業およびスタートアップの戦略:
生成AIのケイパビリティの把握: 生成AIが何に優れているか、そして自社の個別ビジネスモデルにどのように最大のメリットをもたらすことができるかを正確に見極めることに集中することです。
自社開発(Build)か外部調達(Buy)か: AIソリューションを社内で独自に構築するのか、それとも中堅・中小企業にとって多くの場合より費用対効果の高い既存のパッケージ製品を採用するのか、情報に基づいた確実な意思決定を下す必要があります。
プロダクト選定とベンダー管理: AIベンダーを精査する際は、技術的な機能だけでなく、下流で生じ得るリスク、コンプライアンス(規制遵守)、サイバーセキュリティ、法的な論点についても十分に評価します。これにより、社内に高度な専門人材を抱え込む必要性を抑え、優れた専門ベンダーの恩恵を最大限に享受することができます。
大企業の優れた手法から学ぶ: 大企業で実績のある調達プロセスやベンダー選定のベストプラクティスを、自社の規模に合わせて取り入れます。これにより、自社に適したソリューションを正しく選定し、経営リスクを能動的に管理できます。
政府政策の貢献領域: NGOや非営利団体への政府補助金の支給により、広範な社会的利益のために生成AIツールへのアクセスが保護され、大企業との不均衡なギャップが是正され得ます。これにより、多角的な業界での研究開発や、責任あるAIデプロイメントが促進され、「勝者総取り」の状況を防ぎ、一握りの巨頭企業による市場独占を防ぐイノベーションと健全な競争を維持することができます。
JGL(続き):人とAIの協働
人間側のガバナンスと影響力の担保: 非常に複雑な課題です。AIは客観的で信頼できると捉えられがちであるため、そのレコメンデーションに過度に依存する傾向があります。単に「人間が承認に関与(Human-in-the-loop)」するだけでは十分ではない場合があります。
主体的役割の確立: 単に最終承認のゲートキーパーとして人を配置するのではなく、意思決定のコアプロセスそのものに、人の役割を根本から組み込みます。
神託型AI(Oracle AI): 最終的なアクションに対する決定をAIに行わせるのではなく、人間が置かれた状況の説明や、関連する判断情報のハイライト表示にAIを特化させます。この設計により、人間はAIが生成した客観的なインサイトに基づき、主体的に判断を下すことができます。
「タスク(業務要素)」と「ジョブ(職務全般)」の分離: AIは特定の「タスク」を自動化することに長けていますが、それは職務全体の性質とは必ずしも一致しません。人間が得意とするタスクと、AIが得意とするタスクを明確に分離するように職務設定を再設計します。これにより、双方の強みを活かした共生・協働関係を生み出すことができます。ただし、AIが高度化するにつれて、人間の能力が希薄化していくことへの長期的な懸念は依然として残ります。
VSによる総括:
トランプ次期政権の具体的な政策指針はいまだ確定していません。
EUのAI法(AI Act)は、今後もグローバル企業に対して強い影響を与え続けると考えられます。
各組織にとって、社内教育、高度な専門人材の獲得および育成、そして適切な人間による多角的な監視を徹底することが不可欠です。
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